【完】『道頓堀ディテクティブ』

幾日か経った。

ニュースをつけると、犯人が逮捕されたという速報を、アナウンサーが原稿を手に繰り返し読んでいる。

「あっ…捕まったんだ」

まりあは言った。

「これでおさまるといいんやが…」

祈るしかない、といった思いのこもった言い方を穆はした。

翌日からテレビも新聞も雑誌も、果てはネットまでこの話題で持ちきりとなった。

拘束された被疑者は通名を持つ在日の韓国籍の男で、しかし容疑は一貫して否認している。

が。

「血塗られた国花」

などといった見出しで記事が踊り、住居があった鶴橋の界隈にはカメラやリポーターがたむろしてゆく。

そこへ。

差別を助長するような、ヘイトスピーチと呼ばれる一団まで鶴橋や上本町に出現するようになり、

「これは表現の自由や」

と市長がデモ隊を擁護したのもあって、大阪じゅうが灰神楽の立ったような騒ぎのちまたとなり始めていた。

さらに。

「あいつらみな悪党や」

と標榜した一部の過激な集団が生野のリトルコリアに放火をしたり、朝鮮学校の女学生を輪姦するといった深刻な事案も出来し、

──このままでは戦争になる。

とコメントするタレントも出てくる事態になってきたのである。