【完】『道頓堀ディテクティブ』

数日後。

記者クラブの所用で本町署に顔を出したはるかは、茉莉江に、

「ちょっと一瀬さん、いいかな?」

と声をかけられた。

「はい…?」

「何か取材で、これはってのあった?」

「警察がわからないものを、記者が分かるはずがないですって」

探偵じゃあるまいし、とはるかは言った。

すると。

「…そういえば、一瀬さん知り合いに探偵がいるって言ってたよね?」

「あ、穆さんのことですか?」

穆、ときいて茉莉江は思い出したのか露骨に嫌な顔をし、

「うーん…」

行き詰まった表情をすると、

「他にいないの?」

「でもミナミで探偵って言えば、バスジャックの事件以来有名なのは穆さんですからねぇ」

バスジャック事件、とは宮崎での鷹岡まなみとともに遭遇した、例の件のことらしい。

「…あんまり好かないんだよね、あの探偵」

「そんな好き嫌いとか言えるぐらい、まだ余裕あるんですね」

この一言は茉莉江には癪に障ったらしい。

「分かったわよ…会ってやればいいんでしょ」

靴音を高く鳴らしながら、茉莉江が足早に廊下を去って行く。

「…少し言い過ぎたかな」

はるかは反対向きに歩き始めた。