まりあの宿の件をどうにかやっつけたあと、穆と大二郎はその足で河原町の交叉点を難波の駅まで出た。
御堂筋線で梅田まで乗ったあと、
「特急やったら格安やから」
という単純な理由で阪急線で烏丸まで向かった。
「やっぱり京都までのぼらな埒明かんですよね」
車中、大二郎は言った。
「これは長丁場や」
穆は言う。
「どういうとこにいたかを見てから考えな、イメージに振り回されてまう」
どうやらありのまま見ろ、ということらしい。
やがて。
電車が大山崎を過ぎると、次第に山が開けてきた。
西京極のあたりを過ぎてしばらくすると地下に入り、やがて西院を抜けると烏丸駅で二人は降りた。
「女子大学は今出川ですよね?」
抜き書きしてきたメモを手に、地下鉄の今出川の駅を地上へ出ると、雨は止んでいた。
「…梅田からここまで四十分ちょっとか」
ストップウォッチで計ると梅田から烏丸までが特急で四十二分である。
「小一時間ですね」
「…これは、本格的な洗い出しが要るで」
アポイントメントなしではキャンパスでは不審者とされてしまう。
「ただ、言えるのは京都にはおらんっちゅうこっちゃ」
「なんでですのん?」
「考えてみぃ、有馬ゆりあの自宅は出町柳や」
街のサイズから考えても、
「逆に隠れたくても隠れようがないやろ」
とりあえず戻ろう、と言った。
「無駄足ですやん」
「いや」
これで京都だけ探すという選択肢がなくなった、と穆は続けてから、
「人間の行動は一見すると無駄に見えて、実は無駄のない場合がある」
遠回りでもこれがどこかの糸口に繋がってるハズや、と言うと、もと来た階段を降り始めた。



