【完】『道頓堀ディテクティブ』

一週間ばかりが、過ぎた。

この朝、穆が何気なく新聞紙を拡げたときほど驚いたことはない。

一面の大見出しに、

「タカマナ失踪」

という文字がデカデカと踊っていたのである。

すぐさまテレビを点けた。

ちょうどワイドショーの時間帯であったが、

「では鷹岡まなみの失踪について、関係者の話は…」

とコメンテーターらしき声がする。

「これは…もしかして」

飛び出した穆が向かったのは、奈良である。

しかも。

ビルの駐車場からポケットバイクを出し、奈良街道を暗(くらがり)峠から出るという、いわゆるショートカットを穆は選んだ。

「おるかおらんか分からんけど」

こうなってしまっては、もとよりそのつもりではあったが、東郷にじかに問い質すより他はない。

まりあは、自ずと留守番の役回りになった。



暗峠。

大阪から生駒山を越えて奈良に出る国道だが、途中から信じられないぐらいの悪路になる。

細くなった道はつづら折りの坂を登り、途中の石畳をポケットバイクで滑りそうになりながら駆ってゆく。

山あいの茶屋を過ぎると、棚田が見えてくる。

とても大阪と思えない景色だが、過ぎると県境で奈良に入る。

山の中のくねくねした道を抜けると、近鉄線に沿って東生駒に入り、椚峠をさらに越え、何とか昼前には奈良の東郷のアトリエにたどり着くことが出来た。

呼鈴を鳴らすと、

「先生は今日はおりませんよ」

と、通いの家政婦らしき声で不在を告げられた。

「では久保谷が来たとだけお伝え下さい」

帰ろうとすると。

「先生は飫肥にお帰りになられてますよ」

行く先を教えてくれた。

さすがに帰りは暗越えがしんどかったのか、清滝のトンネルから四條畷を抜け、難波まで帰ってきたのであった。