【完】『道頓堀ディテクティブ』

翌日。

まりあと共に大阪へ戻った穆は、鎌倉と東京で調べた一部始終をまとめた上で、報告書を書き上げ、奈良にある東郷のアトリエを訪ねた。

「ほぅ、よくテレビで見るタカマナが、瑠璃子の娘やと」

そう言えば顔つきが、似てなくもない。

「ただ…」

「…ただ、どないしたんや?」

「まことに申し上げにくいのですが」

そう言うと穆は、例の芝浦での一件をかいつまんで説明してみせた。

「なるほどな」

久保谷さんが他人やから恐らくそう言うのやろな、と東郷は言い、

「この東郷が直に言うたらえぇのやな」

いたずら小僧のようなニヤッとした顔をした。

「それは騒ぎが大きくなります」

さすがに、穆がこれには慌てた。

「だいいち祖父が孫に会うのが何であかんのか、世の中の常識の定規で考えたら理由が分からんやろ」

それにわしは東郷忠や、と言い切った。

「そこから先は探偵の範囲外です」

「まぁそうやな」

あとは好きにやらせてもらうで──この東郷の一言に、もはや賽は投じられたのやなという諦めにも似た思いが、穆の脳裏をめぐったのであった。