その夜から。
大二郎は宗右衛門町の「BAR靜」で、ボーイのような立場で店番をするようになった。
もちろん。
いつその気味の悪い男が来るかは分からない…といった理由である。
言うに及ばず。
給金は出る。
それより。
店が朝方まで開いているのもあって、島ノ内や道頓堀で働く夜の女達のちょっとした息抜きの場になっている──という事実も、すぐに見て分かった。
二枚目ではないが少し童顔の大二郎は、
「あら、うぶな感じやし可愛らしいやないの」
と、すぐに夜の女達の弟分のような扱いとなった。
しかも。
常連のソープ嬢に、
「まぁ童貞やなんて…あたしが筆下ろししてあげようかしら」
とまでからかわれる始末で、これには大二郎もさすがに閉口したようである。
そうして。
すっかり店に馴染んで半月ばかりが過ぎた頃、
「…」
白髪も似合う、ソフトな面立ちのシュッとした老紳士が入ってきた。
スーツをパリッと着こなしており、
(こらただもんやないで)
一瞥ぐらいではあったが、大二郎にもすぐ分かった。



