【完】『道頓堀ディテクティブ』


報告の日。

どう説明したら良いか穆はさすがに頭を抱えていた。

「状況証拠でいえばアウトなんやけどなぁ」

が。

密会の決定的な写真も揃っている。

「これは…いくらなんでもアウトですよね」

アシスタントとして働き始めたばかりの有馬まりあでさえ、そうとしか言いようがない。

そこで。

あくまでも紳一郎には見たままを報告してみたのである。

「…うーん」

紳一郎は写真を凝視したまま唸って黙り込んだ。

沈思のあと絞り出すように、

「…なぜ、由美子はこんなことをしたのでしょう」

紳一郎は言った。

「そこは奥さまにしか分からない動機があるとは思いますが」

それは弁護士の仕事であろう。

「われわれは探偵で行動は調査できますが、目的は弁護士でないと調べられません」

冷たいと我ながら感じたらしいが、穆ははっきり言い置いた。

「なので、ここから先は第三者を交えて、ご本人どうしでお話し合いの場を持たれることをお薦めします」

「…そんな殺生な」

大二郎が言った。

だが。

「これは穆さんが踏み込むべき結論じゃないと思います」

あくまでも依頼人に参考になる調査結果を出すのが、探偵の仕事だと思う…といった言い回しで、まりあが反駁したのである。

「しかしやな…」

と言いかけた大二郎の言葉を紳一郎は制した。

「確かにそれは、彼女の仰有る通りです」

この先は自分で決めます、と決意のこもった言い方をした。

「それでこそピッチの飛び将軍」

穆は言った。

「もう昔のことですから」

そう照れながらも、初めて紳一郎は笑った。