【完】『道頓堀ディテクティブ』

穆は続けた。

「…有馬ゆりあさんは、鈴井あゆなという名前で、いわゆるアダルトビデオの女優さんとして、大阪を活動拠点にしてます」

まりあの顔が固まった。

しばし。

沈思が続いた。

暗い沈黙が流れたあと、

「…姉は、生きてたんですね」

いろいろ複雑な感情がないまざったのか、笑いながら泣いている。

「でも」

シュンシュンと鼻をすすりながらまりあは、

「何だかお姉ちゃんらしいかも」

「…そりゃまた一体、どういうことですのや?」

大二郎が訊いてみた。

「…うちのお姉ちゃん、昔から芸能界に入りたくて、でも親が反対してて」

京都の女子大学を選んだのも、親許を離れるためであったらしい。

「そういう情報は早よ言うてください」

検索とパッケージが突破口になったから良かったようなものの、そういう偶然はなかなかない。

「だから、脱いででも芸能界に行くんだって…」

アダルトビデオって聞いて思い出したんです、とまりあは、つぶらな目からポロポロ涙をこぼした。

「…これで点と点がつながったな」

ようやく穆は納得のゆく顔つきになって、

「仕事柄いろんな人を見てきたんですが、人前で裸を曝す仕事なのに、活き活きした様子やったのが、引っ掛かってたんですよ」

その話で合点がゆきました、と穆は言った。

「で」

と穆は続ける。

「お会いしますか?」

まりあは黙ったまま熟考し、しかしやがて何かの決心がついたのか、

「…生きてるのが分かったら、それでいいです」

とだけ答えた。