【完】『道頓堀ディテクティブ』

報告をする日が来た。

「いくらなんでもあの子にありのまま言うのは、衝撃が強すぎるんとちゃいまっか?」

大二郎の危惧は無理もない。

が。

「むしろ事実を明快に知らせるのが探偵の仕事や」

こういう面で穆には頑徹な顔がある。

「せやかてやなぁ…」

ノックがする。

「来たな」

開けたのは果たして有馬まりあである。

「まぁおかけ下さい」

大二郎がコーヒーを出した。

「あらかじめ言っておきますが、気持ちの準備は整ってますか?」

いつにない真顔で言う。

気圧された様子のまりあは、ただ黙ってうなずくしかない。

「結論から申し上げますと、お姉さんの有馬ゆりあさんは、大阪にいます」

まりあはハッとした顔をしてから、

「…よかった」

「ただ…」

まりあは覗き込むように、

「…ただ?」

「ただ、ちょっと申し上げづらい点がありまして」

「何ですか? 覚悟は出来てます」

だから早く言え、というようなことらしい。