会長さんと会わなくなってから一週間、私は抜け殻状態だった。

「円。ちょっと来なさい」

 麻美が教室まで私を呼びに来た。

「何、麻美」

「何よその無気力さは。何があった? 相談してって言ったでしょ?」

 うう。

「あさ、みい。私、どして、どうして私の大切な人は、私の前からいなくなるのっ」

「会長となにかあった?」

 事故のこと、婚約者を名乗る女のこと、そして、私は会長さんが好きだということを話した。

「一之瀬、ね」

「知ってるの?」

「まあね。私がどうにかするわ」

「でもっ」

 会長さんになにかあったら。

「円。もうすぐ命日でしょう。円がそうやって逃げてばかりじゃ、私はおじさんたちに顔向けできない。円のお母さん、すみれさんがずっと昔、私に言ったの」

(女の子は、どれだけ怖くて仕方なくても、戦わなくちゃいけない時が来るの。幸せになるために戦える女の子になるのよ)

「円、円ならできるよ。すみれさんの娘だもの」

「戦う?」

「そう。幸せは自分の手でつかみとるのよ」

 麻美とお母さんの言葉が私に力をくれた。

「麻美、なんだかできるような気がしてきたよ」

「うん。それでこそ私の妹よ。胸張って行ってきなさい!」