「会長。あれから円とはどうですか? 進展はありましたか?」

 二階堂が書類をまとめながらふと言った。

「なになに。紘、円ちゃんに告白したの?」

 司がいつもの調子でからかう。

 しかし、あれだな。

「司。お前は川口の名前を口にするな」

 しかも下の名前で。

「うわあ。独占欲の塊じゃん」

「会長。ここらで行動を起こしませんか」

 二階堂が言う。

「行動?」

「ええ。円をデートに誘ってみてはどうです?」

「……っ」

 デート!?

「いいねえ。円ちゃんどんな顔するかなあ」

「黙れ司。それより二階堂。デートに誘うといっても、あの川口が気づくと思うか?」

「あれ、紘。デートは否定しないんだ。もうメロメロじゃん円ちゃ……ごめんなさい。すみません。もう言いません」

 司を睨みつける。

「そこです会長。遠まわしで言おうが直球で言おうが、円は斜め上の捉え方しかしません。だからいっそ、そう思をせておいて二人で出掛けてみてはどうですか。円も会長のことが気になっているみたいですし」

「なるほど」

 策士だな二階堂。

「では早速、今日の放課後誘ってみてください」

「今日? それは無理だ。仕事がある」

「それなら私と如月先輩でやっておきます。それでいいですよね、先輩」

 司は口を押えたまま何度か頷く。

「すまないな」

「いえ……円には早く幸せになってほしいんですよ。しっかりやってください、会長」

「ああ」

 放課後川口に会える。そう思うと顔が緩んで仕方なかった。