キミのために

「え…ホントにクリス、なの?」


「もちろん。迎えに来たよ、シェリル」



夢と現の狭間にいるのか少しボーッとしていたけど、急に目が驚きの色に包まれ、切なく目を細めてからーーー俺に抱きついてきた。


「え⁉︎どうし…!」


ちょ!…俺の首筋に顔を埋めてんだけど‼︎



良い香りがする…。甘い香り。




「夢でもいいや。会えたんだし…。神様、ありがとね」



え?夢⁇会えた?神様⁇



「シェリル、何を言って…」


…寝ちゃった。


俺の首筋に顔を埋めたまま…寝たよ⁇





はぁ…理性潰す気なの?


なんなのこの子…。襲っちゃうよ。



…まさか男として見られてない?



だとしたらかなりキツイものがあるんだけど。


シェリルの身体は冷たくて、ここに何時間いたんだろうって考えると…。もっと早くに助けられなかった自分が不甲斐なく感じた。




…準備は一ヶ月もいらなかったんじゃないか、とか、そもそももっと早くに出会えてれば、とか、皇太子なのは肩書きだけだ、とか…。



嫌な考えばっか浮かんだけど、シェリルを安全な場所へ避難させるのが先だとその場から立ち退くことにした。