「まだ治っていないものもあるのに…
治るかしら」



シェリルの体にはいたる所に痣やら傷やらがあった。



その傷は誰の目から見てもシェリル自身が自分でやってできたものではない。




誰かに意図的に狙われてできたものである。



「お父様…お母様…!」




目を閉じ、今は亡き父と母の姿を浮かべる。



2人のことを1日たりとも忘れたことはない。




2人のことを思い出すだけで、今までのつらいことは軽くなるのであった。



「っ…!いけない。もう寝る時間だわ。もう寝なきゃ」




傷の手当てと両親を思い出していたらこんな随分遅くなってしまった。




溜息混じりに呟きながら布団を広げる。





その布団は何年も使われたかの様に厚さなどなく、触ると冷たく硬い。





シェリルは高貴な侯爵家直系の令嬢ながら、つらい生活を強いられているのだった。