…なんかいい匂いした。




石鹸かな、彼女が立ち上がった瞬間にふわっと甘く香ったんだ。




香水くさい女ばかり見てきたけど、ああいう子は珍しくて、嬉しかった。





…クセになる匂いだったな。




あの子は珍しいと思った。





皇太子っていう身分を知らないのかな。



それを知らなくても、俺の顔を見て俺に取り入ろうとして来ないし。





純粋で穢れていない少女。





…ふふ、俺のものにしたいな。





純粋に俺の怪我を心配してきたし。




裏表がない行動は見てて癒された。





「あ、持ってきましたよ!」



小さなバケツをどこからか持ってきてそこに水を入れたようだ。




そして彼女はせっせと俺の手当てを始めた。




「はいっお兄さん出来たよ」


…そう言えば。





「自己紹介してなかったね。俺はクリスだ。君は⁇」





お兄さんとか呼ばれたく無かったんだ。




名前で呼んでほしい…。



それに親しい人にしか言わせない愛称で呼ばせたかった。