涙菜は美由の言葉を聞いて心が軽くなった気がした。

 すると不意にチャイムが鳴った。

 涙菜は驚いて携帯のディスプレイを見て時間を確認した。でも、さっきからあまり時間が経っていない。確かに6時半は少しまわっていたが、まだ、何時もの時間になってはいない。

「“彼よ”」

「えっ?」

 涙菜は少し間抜けな声を出してしまった。

「“だから、彼よ。貴女を大事にしてくれる人”」

「!!」

 涙菜は急いでドアを開けた。そこにいたのは美由が言った通りの人が笑顔で待っていた。その手には楽器ケース中身は多分ヴァイオリンだろう。

「優奈・・・おはよう///」

「うん。おはよう涙菜。」

 涙菜は眩しい優奈の笑顔に顔が熱くなった。如何やら、恋人同士という感覚は まだまだ慣れないようだ。

「その・・・涙菜。朝早くに御免ね。」

「ううん。私もっと前から起きてたから。」

「僕、今日が楽しみで昨日中々眠れなくて…」

 優奈は小さく欠伸を一つした。

「あっ、これ、涙菜の家に置いておいて。学校終わって一回家に帰った羅迎えに来るから急ぐから、荷物は此処に置かせて?」

「うん。いいよ。」

「有難う。」

「ねぇ、優奈?」

「何?」

「今日の事。八重斗と梨恵も誘う?」

「う~ん。あの二人何が楽器出来たっけ?」

「えっ・・・訊かれても・・・。」

「まぁ、誘って見よっか。多分今日受け付けしても大丈夫だと思うし、もし出来なくっても、あそこなら退屈しないと思うよ。」

「うん。」

 少し空気の読めない涙菜だった。