雨さえ降らなければいいんだ・・・。
そしたら、いつも通りに帰ればいいんだから。
そんな思いも虚しく、6限目の数学が始まる頃には雨が降り始めていた。
窓の外を見てため息をつくと、授業を受けようと真剣に聞こうとするが、全くわからなかった。
私は、数学が大の苦手だった。
普通なら、欠点ばかり取っているところだろうが、テスト前には浩平が教えてくれていたから、欠点どころか平均点以上は取れていた。
中間テストは、デートする予定を勉強に当てたので、乗り切ることができた。
しかし、やっぱり浩平も受験生だから、もうこれ以上、自分の勉強を見てもらうわけにはいかない。
そう考えると、自ら『教えて欲しい』なんて厚かましいことは言えなかった。
全く理解ができない数学の時間はやたらと長く感じられ、その間に雨は本降りとなっていて、私の気分も落ち込ませた。
嫌な顔されないかな・・・・・・。
授業が終わり、帰る準備をしながらも考えることは、浩平がどんな反応をするかということ・・・。
「はぁ・・・」
外を見ていても、雨が止む気配はなくて、教室のドアの方で騒がしい声がしているのにも顔を向けずに、ため息をついていた。
「何、ため息ついてるのよ!王子様が、待ってるわよ!」
理香の言葉が何を表してるのかわからず、ポカンとしながら理香の視線が向く方を見ると、私と目が合い、爽やかな笑顔を零す浩平が立っていた。
騒がしかったのは、3年の浩平――2年にも人気のある浩平――が2年の教室に来ていたからであった。
もちろん周りは浩平が誰に会いに来たのかはわかっていて、浩平から頼まれることもなく私を呼んだ。

