「ねぇ、ゆかり。いつ、誰が邪魔って言ったんよ?」
私が口を開く前に、優しく問い掛ける理香に、私は眉をひそめて、今にも泣き出しそうだった。
「きっと、谷口先輩も一緒に帰りたいんじゃないかな?」
もう負けだ。
いくら理香に何を言っても無駄だと感じた私はゆっくりと頷いた。
私だって、一緒に帰りたくないわけじゃないけど・・・浩平の勉強の邪魔はしたくない。
だから・・・会えなくても我慢していた。
嫌われたくないから・・・。
「じゃあ、仲良く帰りなさいよ」
口角を上げて笑う理香はとても美しいが、その時の私はとてもじゃないが、彼女の表情を見る余裕はなかった。
大丈夫かな?
嫌な顔されないかな?
勉強の邪魔にならないかな?
そんな不安ばかりが頭の中をグルグルと回っていた。
今まで一度たりとも浩平に嫌な顔なんてされたことがない。
それは、されないように気をつけてきたから。
だから、怖かった。
私がわがままを言ったら、浩平はどう思うのかが気になってしかたなかった。
彼に迷惑を掛けたくない。
嫌な思いをさせたくない。
嫌われたくない。
怒ったりしない浩平を怒らせた時、自分たちの関係は終わるような気がしていたから、どうしても慎重に行動してしまっていた。

