「僕はそこまでしてあげることができなかった・・・・・・」



私が下を見ると、握り締めている拳がプルプルと震えているのがわかった。


そんなんじゃない・・・私は浩平が側にいてくれたことが嬉しかったよ。


「・・・でもずっと側にいてくれたやん」



私は堅く握られた右の拳を私の両手で包み込んで、口元に近付けて「ありがとう」と言った。



しかし、この後浩平から聞いた言葉で私は驚かされることになる。


「・・・『ありがとう』って言うくらいなら、僕の側に居てほしい・・・」



その声に驚き、顔を上げると、真剣な表情をした浩平が真っすぐな眼差しで私を見つめていた。




私はただただ、その真っすぐな茶色い瞳に吸い込まれそうになるのを堪えることしかできなかった。