あじさい~揺れる想い~




終業式も終わり、二人で並んで歩いていると、浩平が言いにくそうに口を開いた。


「ゆかり、明日も浴衣で来てくれるの?」


浩平がこんなことを言うとは思わなかったので、私の悪戯心に火が着いた。


「どうしようかな〜?浴衣ってしんどいから嫌やなぁ・・・」


隣を歩く浩平に悪戯な視線を送った。


「そんなこと言わんといてよ・・・ゆかりの浴衣姿が見たい」


真っ赤になりながら、子供のように駄々をこねるように言う浩平がかわいく思えた。


珍しいなぁ・・・浩平が我が儘言うなんて・・・。


浩平は、私の我が儘は全て受け入れてくれるが、彼から言われることはなく、私にとって、随分大人に見えていた。


しかし、今隣にいる浩平は、馴れないことを言ったためか、真っ赤な顔をして、私から視線を外していた。


めっちゃ、照れてるし。


・・・もっとそんな面を見せてくれたらいいのに・・・。



「わかったよ。着て行くよ」



そう言うと、振り返った浩平は、「ほんまに?」と満面の笑みであったことに、私は驚いた。



3年も付き合って、浩平の我が儘一つで喜んでいる自分が情けなくなっていた。