「・・・・・・私の名前・・・・・・」
私の突然の呟きに、渡辺くんは外していた視線をこちらに向けた。
「名前・・・?」
彼が聞き返すと、私はゆっくりと頷くと、口を開いた。
「私の名前・・・『紫陽花』から取ってるんやって・・・産まれた時に、紫陽花が咲いてたから・・・」
俯き加減の私を見つめて、彼は「いい名前やん。」と言ったが、私は表情一つ変えなかった。
「紫陽花の花言葉知ってる?」
空を見上げて、遠くを見つめながら私は彼に聞いた。
「いや・・・わからん・・・」
軽く首を振って言った彼を見て、私はわざと口角を上げて言った。
「移り気」
そう言うと、私は口角を下げため息をつき、笑った。
――乾いた笑い――
「浮気によってできた子供の名前が・・・・・・移り気という花言葉をもつ紫陽花から取られてるなんて・・・・・・しゃれにもならへんよね・・・・・・」
ほんま、しゃれにもならへん・・・・・・。
私は彼の言葉を待たずに、ベンチにメロンパンを置いて、立ち去った。
まだまだ暑い真夏日の夕方の太陽は、私の背に刺すように差し込んでいた。
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