あじさい~揺れる想い~




『・・・・・・お父さんも・・・・・・その時知って、全部話したの』


私は迫り来る現実に恐れをなしながらも、手を握りしめて、必死に声を出した。


『お父さんはなんて?』


自分でも、声が震えて、聞き取れるのかどうかがわからなかった。

『・・・・・・ショックを受けてた・・・・・・当然やんね。実の娘やと思ってたのが、浮気相手との子やったんやからね・・・・・・』


目を合わさずに言う母に対して、私からは憎悪しか生まれなかった。


そして、冷たく突き刺すように呟いた。



『最低・・・』


多分、母はそう言われることがわかっていたのだろう、動揺の色を見せずに続けた。


『そう言われてもしかたないよね。でもお父さんは薄々気付いていたみたい・・・・・・。

二人目を作ろうとしたけど、全然ダメだったから、自分の精子が悪いんじゃないかって感じてたみたい・・・』


お父さんはわかってたの?



『・・・・・・でも他人なんでしょ?そうしたら・・・・・・私なんて・・・・・・』



浮気相手の子供なんて、かわいがれるわけないと、私は思ったが、母は優しい表情で語りかけるように、話し始めた。



『それでもお父さんは、あなたを実の娘のように接してくれてたでしょ?』

『でも・・・・・・それは事実かどうかわからなかったからで・・・・・・』

『そうかしら・・・・・・この1週間でお父さんの態度は変わった?』

私は退院してからの父親の態度を思い浮かべた。


確かに父親は、今までと同じように接してくれていた。



――今まで通り――



私が反撃しないのを見て、母はゆっくりと口を開いた。


『そうだとしても、私がしたことは、許されることではないわよね』


そう・・・許せない・・・。


お父さんを裏切ったお母さんなんて・・・最低。


『ゆかり・・・ごめんね』


何に対する謝罪なんよ!


私は、母の謝罪の言葉を受け入れることなく、部屋へと向かった。




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