あじさい~揺れる想い~




『お母さんたち、なかなか子供が出来なくて・・・・・・お母さんはすごい悩んでたの・・・・・・』


母は大きなため息と共に、ゆっくりと話を始めるのを私はじっと聞いた。


『でも、不妊治療をしたいと言ってもお父さんは聞き入れてくれなくて・・・・・・。それが理由で喧嘩ばっかりしてたの』


あんなに仲のいい二人が・・・・・・喧嘩するなんて・・・・・・信じられない。


『そんな時にね・・・・・・高校の同窓会があってね・・・高校生の時に付き合ってた人と、そういうことになってしまったの・・・・・・

それから、すぐに妊娠したことがわかって・・・』



私は俯き、目を閉じて、信じることができない現実から目を逸らそうとしていたが、すぐにそんなことをしても意味がないことに気付いた。


『それが、私?』


顔をあげて、母の目を見ながら聞くと、彼女は目を閉じてゆっくりと頷いた。


『そう・・・・・・お父さんとの赤ちゃんがやっとできたんやと思ったの。

お父さんも喜んでくれててね・・・・・・』


眉を下げて、苦しそうに言う母の姿を見て、私は『自業自得』だと思った。


そして、次の言葉は私を驚かせた。


『ずっと私たちの子供だと信じてた』


えっ、どういうこと?


お母さんは知ってたんじゃないの?


『ずっと・・・?』


どういうことよ!



私の頭の中ではぐるぐるといろんなことが渦巻いていた。


『そう・・・その紙を見るまではね・・・』


そう言うと、母は私が握り締めている紙に目をやった。


『えっ?』


私は手の中にある紙に目をやると、唇をきつく噛んで目をぎゅっと閉じた。


『お母さんも、お父さんが退院する時に知ったの』


ってことは、お母さんも1週間前に知ったってこと?


そんなことありえるの?



『お父さんは・・・?』



そうお父さんは・・・なんて言ったの?

私は、父に自分が血の繋がりがないとわかったら、見離されてしまうのではないかと感じていた。