「ごめん、急に・・・」
そう私の耳元で言う浩平の声が、いつもと違って熱いように感じた。
それが気のせいではないことは、微かに熱を帯びた身体によって理解できた。
「ど、どうしたん?」
抱きしめられていると実感するほど瞬きが多くなり、変に身体が強張り、必死に出そうとする声も震えているのが自分でもわかった。
それでも浩平は、私の耳元で「ごめん」と繰り返すばかりで、彼の行動が全く理解ができなかった。
何をそんなに謝ってるん?
何があったの?
もしかして、別れ話とか?
いろんな想像が頭を巡っていたが、当然ながら答えなど出るわけはなく、壁にぶつかってしまう。
とりあえず聞かないと・・・。
停止寸前の脳を働かせて、私は言葉を選び出した。
「浩平・・・話してくれないとわからへんよ」
静かに呟く声が部屋に消えると同時に、浩平の腕の力が緩み、少しだけ私の身体の自由が利くようになった。
そして、ゆっくりと上体をねじり振り返ると、目の前には真っ赤になり、苦しそうな浩平の顔を見つめると、「ね?」とだけ付け加えた。
「あぁ・・・そんな顔・・・・・・反則」
目をギュッと閉じ、眉間にシワを寄せ、唇を噛み締める浩平はさらに苦しそうで、何かを必死に我慢しているようだった。
反則って・・・?
私の頭には浩平が口にした言葉がぐるぐると回っていた。
「浩平?」
優しく問い掛けた声がきっかけとなり、再び私は浩平に抱きしめられ、ねじったままの上体は動かすことができず、ただただ身を任せることしかできなかった。

