閉められたドアによって、周りから遮断されたようになったこの部屋は、静まり返っていた。
二人の呼吸さえも耳を澄まさなくても聞こえてきそうで、物音を立てようものなら、部屋全体に響き渡るのではないかと思うくらいの静寂に包まれていた。
どうしたんやろう・・・。
なかなか近づこうとしない浩平の様子を伺おうと後ろを振り返ろうとした時、ふわりと浩平の匂いに包まれた。
それは、今気ている彼の服の柔軟剤の匂いとは比べものにならないくらい、はっきりとした匂いだった。
「えっ・・・」
私は突然の出来事に、反射的に身を強張らせ固まっていた。
そして、正常に動いていた心臓は、明らかに異常な早さで体内に血液を送り始め、脳の機能も働いていないのではないかと思うくらい、何も考えれなくなっていた。
えっ?何?
何度も浩平の部屋に来ても、こんな風に急に抱き着かれることなんてなかった。
だから、どうしたらいいのかがわからなかった。
それと同時に、何も言わない浩平が何を考えてるのかもわからなかった。
「こ、浩平?」
ようやく動き出した脳だったが、的確な言葉を作り出すことがなく、彼の名前を呼ぶことしかできなかった。

