いつもきれいに片付いている浩平の部屋は、清潔な白が基調とされている。
梅雨のさなかでも、この部屋だけは爽やかな雰囲気を醸し出していて、私はいつ来ても落ち着いてしまう。
私は、白いローテーブルの前に腰を降ろして、鞄の中から数学の教科書と問題集を取り出し、肘をつき一つため息をついた。
浩平は学年でも常に上位の成績で、大慶高校も余裕の成績で入学したが、私はそうではなかった。
浩平がいるからと必死に勉強して、追い掛けるようにして入った高校の勉強に着いていくのがやっとだった。
それでも浩平が丁寧に教えてくれるので、留年は免れていた。
「ゆかり、入るで」
ドアの外から聞こえた柔らかな声に、なぜか背筋を伸ばして、待っていた。
しかし、ドアは開いたものの、なかなか声の主が入って来ないことに違和感を覚えて、振り返ると、お茶をお盆に乗せた浩平が入口で立ち尽くしていた。
「どうしたん?」
私が首を傾げ問い掛けると、浩平の時間が動き出した。
「あ、なんでもないよ。遅くなってごめんね」
と言いながら、座っている私に近づき腰をかがめながら、テーブルにお茶を置いた。
「ありがとう」
浩平の顔を見上げながらお礼を言うと、少し伸びた髪は彼の横顔を隠し表情が見えなかった。
実際には、浩平は私から顔を背けていて見えなかったのだ。
それに気付いた私は、僅かな違和感を覚えた。
どうしたんやろう・・・。
気のせいかな?
あまり深くは考えないことにして、目の前の教科書を開くと、私の後ろから『バタン』とドアが静かに閉まる音が聞こえた。
お茶をテーブルに置いた後、浩平が開いていたドアを閉めに行ったのだ。

