あじさい~揺れる想い~


地元の駅に着くと、雨足は弱まっていたが、それでもまだ止む気配はなかった。


電車に20分ほど乗った程度では制服は乾くわけもなく、気持ち悪いくらいに肌にベッタリとついていた。


天気予報では、曇りの予報だったので傘を持っていない人も多いようで、駅舎から走って出る人も見られた。





「ゆかりが傘を持っていてくれてよかったよ。ありがとう」


傘なんてほとんど私の方に傾けていて、自分は濡れているのに、彼は嬉しそうにそう言った。


でも、きっと私がいなくても、下足場で傘を持っていない浩平が空を見上げて困っているだけで、傘を貸してくれる女の子はいるはず。

そうしたら、こんなにも濡れなくても済んだだろう。


「そうだね」

嫉妬は、心の奥にしまって、私は笑顔で応えた。



ほどなくして、浩平の家が見えてきた。


真っ白な壁は見上げるくらい高くて、いつも溜息が出る。


庭も広くて、お母さんの趣味のお花がたくさん植えられていて、季節ごとに様々な景色が楽しめる。

その中には、あじさいもあり、立派に花を咲かせていた。



「ほら、あのあじさいの色も変わっていたから気になって」



「あっ、そうなんだ。でも、浩平はよく見てるよね。なかなか、あじさいの色に気づく男の子はいないと思うな」」


本心からそう思う。

浩平は、いろんなことに気付いてくれる。

気付いてくれるだけでなく、それに対してどうして欲しいかをわかってくれている。

だから、私も安心できる。


「まぁ、気付きすぎるのも時には欠点になるんだけどね」


遠くを見るように言った言葉の意味は、私には理解はできなかった。