あじさい~揺れる想い~


肩を寄せ合いながら歩いていても、私の傘では二人をすっぽり覆うことができず、肩の辺りが濡れていた.



それでも、浩平はできるだけ私が濡れないように傘を持つ手を調節してくれていた。

そのさりげない気配りが大好きだった。



駅に着き、持っていたタオルで浩平の肩を拭いていると、

「ありがとう。でも、ゆかりも拭かないと風邪ひくよ」

と彼の肩を拭いていたタオルを私に渡してくれた。


「うん」

衣替え時期だが合服を着ているので、ブラウスが腕に引っ付いていて気持ち悪かった。

しかし、いくらタオルで拭いたところで、その不快感は変わらなかった。


駅のホームには、同じ学校の生徒がちらほら見られた。



「よう、浩平、塾サボってデートか?」

とニヤニヤ顔の友達に茶化されていたが、

「今日は、塾休みなんや」

と動揺することなく応えていた。


私たちは地元の駅の改札が近いホームの端近くまで歩いた。



「ゆかり、これから僕ん家に寄っていかない?最近、数学教えてやってないから、教えてあげるよ」


急に言われた言葉に私は驚き、浩平の顔を見上げた。


浩平の家には何度となく行ったことがあるので、今更驚かないが、自分の勉強をしなくてもいいんだろうか?と思ったので、つい驚いてしまった。


「嫌やった?」


浩平の表情が一気に不安げになった。




そんなわけがない。


彼氏に勉強を教えてもらえるんだから。


でも・・・。



「浩平の勉強の邪魔にならない?」



遠慮がちに聞く私に、彼の不安そうな表情は晴れ、爽やかな笑顔を向け、私の頭を優しく撫でた。



「そんなこと気にしなくていいから。復習にもなるし」


そう言ってくれる浩平の顔が優しくて、いつまでも見ていたいと思った。