伊織はあたしと外人を、怪訝にみていた。
けれど、あたしのドレスの状態がヒドイのを知ったのか。それとも、あたしの泣き顔に驚いたのか。
首に打手をし、一瞬で外人を気絶させた。
それから携帯で短く話したあと、あたしの手首を掴んで、近くのエレベーターに放り込んだ。
ホテルの最上階のボタンを押した伊織は、あたしの顔をジッと眺める。
涙の伝った顔は酷い有様で、俯く。
なによっ…
こういう時だけ、人の顔をジッと見るなんて…。
普段はユキノしかその瞳に映さないくせにッ。
最上階までの長い旅を、この密室で伊織と2人なんて耐えきれない。
づるづると身体は、床に沈み込む。
伊織は立ったまま、あたしを見下ろしている。
「怖かったか?」
今まで一番落ち着いた声音だ。
冷たさを含まない、低く響く声。

