エンビィ 【完】





「I want to guide to room」



不幸にも呂律は機能しているらしく、なんと言っているのか聞き取れる。



―――けれど、

部屋まで送ってあげるなんて、冗談じゃい。



それはなんであたしがという気持ちもあるが、

なにより相手は酔っ払い。

部屋に連れ込まれるような真似があってからでは遅い。



遠目にボーイが行き来しているのを見る。

はしたないことを承知で、

大声でボーイを呼ぼうと口を開いた瞬間―――…




「Shut up」
 


身体を抑えこまれ、 



「Following」



口許を大きな手で塞がられた。



………酒臭い。


それがあたしの身体に移ると思えば、吐き気がする。それよりももっと不愉快なのが、相手の体温。

化粧が崩れるのも構わず、必死に抵抗した。