エンビィ 【完】





「けれど、貴方との約束を違えたことは、未だかつてなくってよ」


「…………」


「おそらく……それは、生涯破ることがないから、安心なさって」


「………本当…?」


「ふふふ本当ですわ。こんな私でも、貴方との約束くらいなら守れますわ」



男の傍を通りすぎ、

明るいところへ導かれていくユキノは、




「言い忘れてましたけど、玲奈さん」



首だけで振り返ると。



「今日のドレスは、よく似合っていてよ。まるでウエディングドレスのようだわ」



ユキノの容姿は妖艶なのに、その黒真珠の瞳は、純粋無垢で。


一瞬だけ……、一つの容れ物に、異なる2つのものが入っている…ような錯覚を起こした。そのタイミングで、見たこともないほど、儚く優しく微笑まれたから、より一層ユキノという人物が分からなくなった――。