訝しげに考える様子の男に、ユキノは思いを巡らすように両腕を組み直す。
男のほうは微動だにせず、そんなユキノを観察しはじめた。
間抜けにもその空間に呑みこまれてしまったあたしは、床に足がくっついたように直立不動で2人を見ていた。
短くとも2分は経っていたはず。
やっと腕組を止めたユキノは、意味深に笑いつつ、男のほうに歩み出した。
「このユキノ、嘘も平気につきますし」
「…………」
「約束だって簡単に破りますわ」
「…………」
相変わらず、その桜色の唇からは、聞き間違いかと疑う言葉が連発されている。
おかげであたしの口は半開きだし、男の眉間には、後残りしそうなほど、強く皺が刻まれている。

