エンビィ 【完】





その代わりに頂戴よ、アンタの腰を折る姿を。

そして請いなさいよ、許してほしいって。

喉まで出かかったその願望は――



「―――ユキノ」



無機質を匂わせるのに、甘美を混ぜ込んだような声に遮られた。ユキノは呼ばれる前からその存在に気づいていたようで、特段驚くこともない。


ヒールを履いたユキノより、ほんの少しだけ背の高い男。




「時間だけど、いける?」


「ええ、いつでもどうぞ」



間髪入れずに返したユキノに、その男の眉が跳ね上がる。

伊織とはまた違ったタイプの端正な顔の男………けれどそれに目を奪われている余裕はない。



なぜこの男は……、


しかもユキノの知り合いらしい男は、

パーティ会場だというのにスーツは着ておらず、街をうろうろしているようなラフな出立ちなのか。



そればかりが頭を占める。