エンビィ 【完】





バルコニーといっても、ガラス張りだから寒くはなかった。


ユキノはガラスに左手をついて、外を眺めた。あたしはといえば、ガラスに反射するユキノを見ていた。


室内からは人の声がするのに、ここは静かで、

月明かりだけが差し込む。




「………謝りたいことって何かしら?」



その横顔が整いすぎて、ゾッとする。

本当に身動き一つしなければ、精巧につくられた人形だ。




「伊織お兄さまのことですわ」


「…………」


「貴女を呼び出したと聞きましたの。何を言われたのか想像に難くないので謝りますわ」


「……なぜ…ユキノさんが謝るの?」



ユキノはこっちに身体をむけると、ため息をつく。