エンビィ 【完】





あたしのこと……馬鹿にしているようにしか思えない。


この会場に被ることのないオレンジ色のドレスは、あたしだけ。

クシュクシュとさせた生地で、誰よりも人目をひくはずだったのに。


今日も一番注目を浴びていたのは、ユキノ。




「――――…百瀬!!」



オレンジの生地をハサミでビリビリに刻みながら、部屋に呼びつける。

百瀬はドアのまえで返事をした。




「退学届を用意して」


「高校を辞められるのですか?」


「馬鹿言わないで。退学するのはあたしじゃないわよ」


「悪事の片棒を担いだ、クラスメイトのかたを退学させるおつもりですか?」



百瀬は特段驚く様子もなく、

平然と告げた。




「…は…なんで…?」


「彼が、ピアノに細工するのを見ていたからです」


「…………ももせっ…」



刻むのを止めて、百瀬のほうを振り返る。