エンビィ 【完】






ユキノに、嫌味の一つでも言ってやらないと、気が済まなかった。


――――だから




「みんなの前で恥をかかせちゃったのなら謝るわ」



心底信じられないという気持ちを、



「だって英才教育を受けているあなたが、ピアノを習ってないなんて考えてもみなかったの」



真心を込めて言った。


……それなのに、




「ピアノの英才教育を受けてないのは確かだけども」



ユキノは、不思議そうに首を傾けた。



「ピアノが弾けないわけじゃなくってよ」



……は?

なっ、なに…言ってんのこの女…。



「だって、あの時……あなた…ひけないって…」



ユキノは、蝶のまつげをゆっくりと上下させた。