エンビィ 【完】





お嬢様という世界では、「出来る」と「出来ない」じゃあ天と地ほど立場が違う。


出来ないことは、恥辱。


なーんだ、全然大したことない。


生まれと育ちがいいだけ。

生まれ持った地位と美貌があるだけ。

ただそれだけ。



そう考えて直した瞬間、あたしの立場が逆転した。




「私、聴いてみたいと思っていたんですの」



玲奈さんのピアノ

上手って有名ですわよ?



続けられた言葉に、悪意を感じてしまった。思わずユキノを凝視するが、ユキノは何ら変わりなく立っているだけ。


このピアノが杜撰なものだなんて……

事前に知らないユキノが、わざと言い出したとは考えにくい。



――――でもだからって。




「いいじゃないか玲奈。ユキノさんは、玲奈のピアノをご所望だ。好きな曲を弾いてご覧なさい」



これはない。冗談じゃない。