「ユキノさんにピアノで祝ってもらえたら、あたしは幸せ者だと思うの」
「…………」
「だってここにいる誰も、あっそうね、伊織様以外は、誰もあなたのピアノの音を知らないんじゃなくって?」
「…………」
「それを、あたし一人のために贈ってもらえたら……それって、すごく思い出になるプレゼントになると思うの!」
―――――そう、
ここにいる全員にとって、とっても思い出深い日になると思うの。
用意してあるグランドピアノは、鍵盤を重くしてある。
それのみならず音調を微妙に狂わせさせ、そのうえ、ピアノ線を何本が切らせた。
想像に違えず、
目も当てられない、ひどい演奏が聴けるはず。

