エンビィ 【完】





みんなの視線が、ユキノに集中する。


ユキノはそれに臆する様子はなく、まるで挑発するように「私でよければ」深く微笑んだ。


あたしとユキノを繋ぐ一直線が出来上がった。

伊織が無表情でこっちを見ているけれど、知らんふりを通す。



ステージまで上がってきたユキノは、

女優のようであり、

どこか異国の人間のようでもあった。




「私は貴女をどう祝ったらいいのかしら?」



あたしは勿体ぶるように、

ステージの上にすでに準備してあるグランドピアノに触れる。

ツヤツヤに磨かれたピアノは、ユキノを待っている。




「あたしのために、一曲弾いて頂きたいの」


「…………ピアノで?」