「有名だわ貴女のこと」


「ユ、ユキノさまッ!?」



2人が慌てて止めに入るが、もう遅い。



 
「口々にそうおっしゃるから、耳にタコができるかと思ったわ」


「………」


「成金の娘なんですってね」


「………」


「それは別に、この世界ではそんなにめずらしいとも思えないのだけど」



その口は弧を描いていて、止まる気配は皆無。

顔を青白くさせて震えているのは、“とてもお似合いな”ドレスを着ている2人。



ぶるぶる震えちゃって、

小鹿じゃあるまいし……見苦しいたっらない。

ほんと……見苦しい、あたしの両手…。




「貴女の場合は、一代で財を成したお父様と血が繋がってないから有名、ってところなのかしら?――――馬鹿バカしい」



ば…ばか、ばかしい…?


まるでトーンを変えずに言われたから、その「馬鹿バカしい」が空耳かと思った。