エンビィ 【完】





屈辱的な気分と、具体的にソレだと断定出来ない、モヤモヤした感情が渦巻いている。


あの女…妬みの対象だわ…。

それが思っていたより強いと気づいたのは、化粧室という密閉空間に足を踏み入れた時。




『あの下品な女はダレなの?』


『見ました、あの髪色!?』


『まるで見世物ッ!』


『1mmも伊織様に釣り合わないわ!』


『それにしても見ない顔』


『どこの娘なの?』


『フーゾクの小娘が紛れたんじゃなくって!?』


『伊織様に向かって、セクハラで訴えるなんて、』


『身の程知らずもいいところッ!!』



踏み入れようとした足を、ゆっくり戻す。


はっ、散々な嫌われようね。

それりゃあそうね。

伊織はみんなのモノではないにしろ、誰の手にも入らない、言わば高嶺の花。それが得体のしれない女にモノになろうとしているのだもの。