エンビィ 【完】





溺愛というものを、生まれて初めてみた。



女の派手な髪を梳き、

頬を包みこみ覗き込んで、そのまま抱きしめる。

ほんとに……

なにをされたわけでもないのに…プライドを傷つけられた気分になる。



伊織のお姫様は、場が引くほどイタイ容姿。

周りの連中も戸惑いを隠せない。



しかも――、



「やめてくださる?」



抱擁を拒絶した女は、

その腕から抜け出し、



「公共の場でこのような真似、セクハラで訴えますわよ?」



――――楽し気に笑った。


伊織が溺愛するお姫様は、どこの誰だか知らないけど、この場で伊織との親しさを見せつけるなんて、相当な身の程知らず。周りからどんな目で見られているのか、気づかないほど鈍いらしい。