そんな悠長なことを考えられたのも、ここまで。
なぜか伊織は、一刻一刻と近づいてくる。
さすがにそれには、頭がパニック。
眉根を寄せて、少し焦っている伊織は、
あたしを見て―――ふっと表情を緩めた。
"シンデレラガール"
おめでたい頭に浮かんだのは、
毛嫌いしているシンデレラストーリー。
その柔らかな笑みに、
心を開いた微笑みに、
心臓が鷲掴みにされて、硬直してしまった。
一歩一歩距離を詰めてくる伊織は、
「―――…探した」
当然のごとく、あたしの横を通りすぎた。
拾ってもらえないガラスの靴は、惨め。
愚かにもあたしが選ばられたと、その勘違いが、惨め。
あの時以来の――屈辱だ。

