エンビィ 【完】





「派手に着飾った方たちばかりだわ」



感嘆するようにそう漏らす女は。

蝶のようにフサフサとまつ毛を羽ばたかせる。そのつけまつげは、ボリュームがあるのに見苦しくみえない。




「…パーティだから綺麗な服を着てくるのは当たり前でしょう?」



あなただって着飾ってる、

女のドレスに視線をなげた。



「まあ、そうだったわね」肩を竦めた女だけど、あたしは改めて女のドレスをみて、目を瞠るしかなかった。



そう――派手に着飾ってなどいない、

この船上ではめずらしいほどの、とてもシンプルなドレスだったから。



白い肌に栄える、サテン生地の黒のドレス。

そして、ダイヤモンドが首元で光っている。




「どうかなさった?」



口を噤むあたしに女が声をかけるが、「やだっ…!ち、ちょっと…こっちにきてる!」周りの騒音にかき消された。