エンビィ 【完】





あたしは馬鹿にされないよう、言葉につまるような愚かな行為はしない。

そのために、常に頭を回転させている。



―――のに、





「…………………、ええ…」

「へえ。なら私も頂こうかしら」




そう言ってボーイに声をかけた女。ボーイもギョッとしていたが、瞬時に「どうぞ」接客用の笑顔に戻した。





「ずっと見られることに抵抗感はないのだけど、ちょっと不躾ではありませんこと?」



からかうように言われて、

シャンパンを飲む姿をずっと見ていたと気づく。



なんか…勘にさわる女。

ここで視線を逸らしたら癪にもさわる。




「……あなたどなた?……初めてみる顔だわ…」


女はくすりと笑う。



「面白いことおっしゃるのね」

「………」

「貴女はパーティの常連なのかしら?」



“常連”


その言葉にモヤモヤしたものを感じた。

まるで、

そんな会にずっと出席してるのと言いたげ。