エンビィ 【完】





よく見れば後ろを気にしており、少し離れたところに、中年の男が意地汚い目つきでこちらの様子を窺っていた。




「ええ、あたなに"とてもよくお似合い"だわ」



ホント、どうしようもない連中。


パイプ役になってほしいんなら、この船上で恥をかけば?そしてら、パイプ役になってやらないこともないかもれない。まあ、どんなことをしてくれたって、あたしが肩を持つなんて0%だけど。




感染したような浮つい空気に、シャンパンがより甘く感じた。


チラリと見え隠れする若葉の姿。

目を潤ませる若葉は、美人じゃないけど、それなりに人目を引く。



再びグラスを口に運ぼうとした間際――




「ねえ―――そのピンクの飲み物美味しいのかしら?」



声を掛けるのはいいけど、

人が飲み物を飲もうとしている瞬間には、止めてほしい。

僅かに止まった動作は、ひどく間抜け。



………だれよ…?

また、聞いたことのない声の主を一瞥した。


その刹那、

驚愕なんて表現じゃ足りないほど、表情が崩れた。