潮の香りに顔を顰めつつ、2杯目のシャンパンに口をつける。
ほんと…潮風が強いわね…。
セットされた髪が乱れないか心配になる。
それは船上にいるお嬢様も同じよう。
「………」
潮風…だけにしては変。
やたらにドレスを気にしている仕草が目立つ。
「レナさん、こんばんは」
「こんばんは」
「…あの、」
しかも…女だけじゃなくて…船上にいる全体が…騒がしい。
「あの…、レナさん…?」
「なにかしら?」
「今日の、わたしの、ドレス、どう…ですか…?」
上の空で会話していたけど、
どうにかその言葉で女に焦点が戻った。
あたしの言葉を待っている女は、どっからどう見ても中学生。
しかも、知らない顔。

