「ケイ君行きましょう」 「おいっ……ユリ!!」 ずんずんと、会場のほうに男を引っ張っていく女。 その肩では、真っ赤な薔薇 ユキノに相応しい色の薔薇が、揺れていた。 「……玲奈様」 「帰るわよ、百瀬」 冷静さを欠いていたあたしは、ここで初めて自分の現状を理解した。バラバラだったはずのベクトルは、あたしたちのほうに集中していた。 でも今は、それを取り繕うのも、面倒。 石段を下りようとするあたしを、百瀬が引き留める。