エンビィ 【完】





女の手を掴み引っ張るようにして一緒に立ち上がった男に、立場が逆転したような錯覚をおこす。

それはただ単に、見下す立場から、見上げる立場に変わっただけのものだけど。



鋭く睨みつけてくる男は、ユキノ並みに、派手で目立つ。



真っ赤、

真っ赤なペンキをぶちまけたんじゃないかってくらい、鮮やかな髪色の男を、先ほど一瞬でもユキノと勘違いしてしまった。



そんな男とあたしに、戸惑うような視線を彷徨わせる女は、傷んでなさげな綺麗な黒髪。



この2人は、とても対照的。

それは見た目もだし、中身もそうなんじゃないかと感じる。




「それとも恋人?」


「………ちげぇ…」


「ふうん、まあ、どっちでもいいんだけど」



どうしてかこの男を見ていると、黒い感情が湧き上がってくる。

めちゃめちゃに、叩きのめしたくなる――。