エンビィ 【完】





「玲奈様…?」



――フッ

口の端が上がる。


そのまま、男に近づくあたしに、百瀬が怪訝に呼ぶ。もちろん、あたしは、あたしのしたいように、思うがままに。


そう―――荒れ狂った渦巻く感情に従った。




「ユキノさんのご友人のかた?」



男はジッと、女のほうは突然のことに吃驚したように、あたしを下から見る。あたしはと言えば、見下すように2人に笑いかけた。




「あ?…なんだよ、てめぇは…」



てめぇ?

男はあたしを睨みつけている。ユキノの交友関係を疑ってしまうほど、言葉遣いと態度が悪い男に眉が寄る。




「なんだっていいじゃない」

「あ?」

「で、ユキノの友達なの?」



こんなやつに猫を被るなんて無駄。幸い周りの目は遠く、会話の内容は聞こえやしない。