エンビィ 【完】





ユキノと瓜二つの黒真珠の瞳が、地面に膝を折る男を一瞥する。

その双眼が何を考えているのか、あたしには分かるはずもない。




伊織は、腕時計を確認する仕草をすると、次は膝を折る男を視界に入れることもなく、会場に戻っていく。あたしは、その踵を返す姿が見えなくなるまで目で追っていた。



それはあたしだけでなく、その場にいた全員がそのようで。

伊織が消えたあとの会話は、




「あちらユキノ様のご友人?」


「随分とまあ」


「変わったかたと、つるんでいらっしゃったのね」



本当に、下品極まりない。


あたしは少し離れたところから、未だ地面に手をつく男を眺めていた。その拳は震えていて、血管が浮き出ている。